たしか、Asuraが瀕死の子ウサギを家に連れて帰るところまでは話したような気がする。
このあとの話を今日は殴り打つね。
Asuraは部屋に戻り、子ウサギを暖炉の前に寝かせた。
「どうしましょう…子ウサギには何を食べさせてたら良いのかしら…」
人肌に温めたミルクを少しずつ指に乗せ子ウサギの口元に持っていく。
反応はなく、なかなか飲んでくれない。
「ねえ、あなた、子ウサギが死にそうなの!」
冷静なAsuraが珍しく動揺している。
「こんな小さい身体だ、もう助からないんじゃないか?あまり情を持つんじゃない。お前は悪くないんだから」
Batistaはいつも通り変わらぬ様子。
Asuraは一晩中、子ウサギを見守った。
いつのまにか疲れて寝てしまうAsura。
暖炉から物凄い勢いで熱風が吹く。
その熱風は子ウサギを乗せて円を描く。
不思議なことに熱風は徐々に子ウサギの身体に入って消えていく。
Asuraが目覚めたときには、子ウサギの姿はなかった。
「あれ…?子ウサギは…?」
飼い猫のKuloが駆け寄り、Asuraの靴下をかじる。
「だめよ、そんなイタズラしないの!」
そう言って立ち上がったとき、暖炉のそばに横たわるウサギの耳を生やした赤子が目に入る。
「どういうことなの…!?」
Asuraはしばらく立ちすくむ。
「どうした、大丈夫か?一晩中ここにいたのか?」
BatistaがAsuraの肩に手をやり寄り添う。
が、すぐにどういう状況かを目の当たりにし言葉を失う。
そう、こうして不思議に不思議を重ねた奇妙な出来事によって誕生した生命体をこの夫妻は育てていくことになるのである。